8.29(土) ~9.4(金)『戦争と一人の女』★トークあり
坂口安吾の幻の傑作を映画化!!
監督・井上淳一氏の舞台挨拶もあり!
▼解説
坂口安吾の同名小説とその続編を映画化した官能文芸ドラマ。時代に絶望し、元娼婦の女と刹那的な同棲を始めた作家の野村。一方、戦場で負傷し、精神的後遺症から妻との性交渉ができなくなった片腕の男・大平は、数人の男たちに襲われている女を見て自分が興奮していることに気がつき……。太平洋戦争末期から終戦後の東京を舞台に、時代に翻弄された男女の交錯する運命を描きながら、戦争の本質をえぐる。監督は、若松孝二監督の下で映画作りを学んだ脚本家の井上淳一。
▼上映期間
8/29(土) ~9/4(金)
※ 8/29(土) に舞台挨拶あり
上映スケジュールはコチラ
▼予告編
【映画界からのコメント】
キム・ギドク監督からのコメント
容易い挑戦ではないことを知っていたので、映画を見ている間ずっと、製作者・監督・俳優たちの素晴らしさに感服した。より多くの人がこの映画を見て、戦争がどれほど多くの人達に傷とトラウマを残し、未来まで影響を及ぼすかを知ってほしい。
キム・ギドク
映画監督・脚本家・映画プロデューサー。「サマリア」「うつせみ」「嘆きのピエタ」で、三大国際映画祭受賞。
ポン・ジュノ監督からのコメント
冒頭のシーンから印象的です。主人公の男が病院から出てくるとき…病院を背にして歩いてくる男の黒い顔は、顔が見えないその黒い姿は、まるで黒い幽霊が病院から出てくるような印象です。この男には片腕がありません。戦争で腕を失くし…。次のシーンで女性主人公が登場します…タバコを吸っている…この女性には腕がありますが、感覚を、喜びと快楽を失った女です…不感症の女。そしてこの女性がついていく小説家は…小説が書けずにいる小説家です。人物がみな不具、または欠乏の状態から始まるこの映画は、日本の戦中、戦後に日本人が陥っていた精神的な恐慌、または日本人のメンタリティーそのものを赤裸々に見せている映画だと思います。 普通、このようなタイプの映画には、ある象徴やメタファーに閉ざされてしまいがちな危険性が伴いますが、この映画は手持ちカメラによる独特なカメラワークと、ズームイン、ズームアウトのような奇妙な躍動感を与えているカメラの美学によって不思議な現在性を帯びています。セクシャリティと戦争、または権力の関係から政治的、歴史的なテーマを描く映画は多くありましたが、この作品にはそれらと違う雰囲気と空気があります。監督の演出による非常に微妙な「現在化した空気」のようなものが存在しています。同時に、この作品は大変勇敢な映画です。戦犯国家における一個人や被害者を通じて、「私たちも同じく戦争の被害者でした」というような嘆きや言い訳を語るのではなく…そうかといって、単純に無気力な自己幻滅と自己蔑視を通じて自虐に徹する映画でもありません。歴史を遡って言うべきことを伝える、メッセージを投げかける映画です。腹がすわった、勇気のある映画。 男の主人公がカメラの正面を見据えて「天皇陛下の命令により強盗と、強姦と、殺人を犯しました」と、カメラを凝視して語るシーンがあります。韓国やアジアのすべての国々、第二次大戦や太平洋戦争の被害者であった多くの国々で、この映画を必ず観なければならない理由があると思います。真に良識のある…まだ生きている日本の知性の面貌を見せてくれる映画だと思います。特に、日本の右傾化が懸念されている昨今の時流の中、このような映画が作られたということに、心から拍手を送りたいです。 『ディアハンター』のような映画があります。その中でロバート・デ・ニーロ、メリル・ストリープ、クリストファー・ウォーケンが演じる登場人物たちの物語を観ていると、とても悲しく、悲劇的です。そのような悲しみと悲劇性に深く共感しながらも、いざ一歩引いて映画を観ると、アメリカがベトナム戦争に対してこのような作品を作ったということについて、「ディアハンター」をベトナムの人々が観たならばどのような気分になるだろうか?そんなことを想像すると、何かすっきりしない、もやもやしたものが残ります。 また、ケースは違いますが、私が尊敬するアニメーション監督、高畑勲の「火垂るの墓」も本当に美しいアニメーションで、戦時中に飢えで死んでいく少女の姿に号泣しない人はどこにもいないと思います。しかし、そのような戦争の責任が誰にあるのか、そのような歴史的な責任と集団的責任は誰にあるのかを正面から見据えて問いかけた映画は、おそらくこの映画が初めてではないでしょうか。 大島渚や若松孝ニのように挑発的で政治的なメッセージを投げかけてきた日本の監督たちをこれまでリスペクトしてきましたが、その流れをくむ生きた知性の作品が誕生したと思います。俳優の演技もみなさん素晴らしく…勇敢で素晴らしい演技でした。特に、体当たりで演じられた女性主人公、江口のりこさんの熱演も忘れることができません。特に、まるで花火のように空襲の火花が飛んだとき、初めて少女のように満面の笑顔で空を見上げる表情は忘れられないシーンとなりました。 ありがとうございました。
ポン・ジュノ
映画監督・脚本家。『ほえる犬は噛まない』(’00)で長編デビュー。以降、『殺人の追憶』(’03)、『グエムル 漢江の怪物』(’06)など数々のヒット作を監督する。『パラサイト 半地下の家族』(’19)でカンヌ国際映画祭最高賞パルム・ドール、米アカデミー賞監督賞含む4部門受賞。
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