11.12〜11.26『幸福は日々の中に。』
幸福は日々の中に。
「普通」という曖昧な海を泳いでいるみんなへ。
「幸福は日々の中に。」ありのままでいられる場所「しょうぶ学園」―そのままでいい、何も学ばなくていい—
鹿児島マルヤガーデンズの屋上で、知的障がい者施設しょうぶ学園のバンド「otto & orabu」の演奏を見た瞬間、この人たちの映画を撮りたいと思った。
20人以上の怪しげで派手な衣装とメイクを塗った人々は、障がい者とその施設の従業員の混合の楽団だった。ザワザワと潜在意識に強く響いてくる、不揃いで不可解、でも楽しげで爆発するような音楽は、雨降る屋上のじめじめした空気を吹き飛ばすかのように、大きな疑問符を見る者の心に投げかけていった。
それ以来二人は鹿児島へ何度も通い、しょうぶ学園の世界の中に少しずつ融け込み、カメラを回し続けた。外から訪ねる人の目線ではなく、障がいを持つ彼らのあたり前の目線を見つめながら。
中庭で、来る日も来る日も一本の木の側で、しゃがみこんでどこかを見つめ続けるたけしくん。カメラをひたすら向け続けても全く気にしない。気持ちのいいカフェテリアでごはんを食べる様子も、皆人それぞれ。誰も自分を人と比べるということがない。刺繍工房で糸と布と戯れ部屋中を埋め尽くす吉本さん。彼には目的もゴールもない。ただただ永遠の今の中で、布を小さく切り取り、糸を並べて、満ち足りている。紙の上から椅子から机から、床も壁もペンキで四角い升目を描き続ける濱田さんもまた、何年も同じスタイルで毎日毎日升目を描き、その迷いの無い筆さばきは完璧な巨匠のそれだ。木工所では、みんなトンカントンカン好きなように掘って掘って掘りまくり、ニコニコ顔の中野くんはボタンの詰まった箱を来る日も来る日もぐるぐる回し続ける。
そんなしょうぶ学園を生み出し、守り支え続けてきた福森家の人々。現在の学園長福森伸さんは、長年彼らに寄り添いながら、常に自分自身のあり方に疑問を抱き続けてきた。
「僕たちは、彼らに社会の秩序というものを教える立場ではない。彼らから精神的な秩序を学ぶべきだ。やらなければならないことは、彼らが安全に歩ける道をつくることである」と言う。
私たちがどんなにがんばっても辿り着けない、真の自由と幸福に、彼らはいる。そのままいる、永遠の今の中で。このしょうぶ学園にいると、まるで未来の世界にいるかのような錯覚に襲われるのは、ここが、私たちがいつか辿り着きたい永遠のふるさとであり、あの不思議な音楽と共にキラキラとその姿を惜しみなく見せてくれるからなのだろう(公式HPより)。
予告編
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